なぜ電気通信事業法の改正が行われるのか?
電気通信事業法とは、その名の通り「電気通信事業」に関するルールを設定した日本の法律です。「事業者に対する公正な競争」と「利用者(消費者)の利益」を保護しながら、電気通信の発展と普及を促進することを目的に定められました。日本の電気通信事業は明治時代の電報や電話から始まりましたが、当初は国営や公営企業が中心だった電気通信事業に民間の事業者が参入し始めたことをきっかけに、1984年に最初の法律が制定されました。電気通信事業法はこれまで通信技術の進歩(有線電話から無線電話、インターネット接続、5Gなど)や、市場環境の変化(1980年代のNTT民営化など)、社会ニーズの変化(プライバシー保護)など、時代の潮流に合わせた改正を繰り返しています。改定により、事業者にとっては安全で公正な運営の確保、消費者にとっては権利や利益の保護の実現につながっているといえるでしょう。
「電気通信事業法」今回の改正までの流れ
電気通信事業法は1984年に制定されてから、環境や技術発展によるサービスの変化に合わせて改定を繰り返してきました。
電気通信事業法の制定により、翌年の1985年にNTTが民営化されました。これにより、国営や公営での運用だった電機通信事業においての競争が促進されるようになりました。
1990年代 モバイル通信の発展と事業法改定携帯電話の普及が始まって通信事業者間の競争が激化したことにより、利用者保護という新たな課題も発生しました。電気通信事業法もモバイル通信に対応する形で改正されました。
2000年代 電気通信事業が許可制から登録・届出制に2000年代に入ると、インターネットのブロードバンド接続が普及し始め、インターネット事業者も電気通信事業法の対象となりました。事業法改正によって 2004 年から電気通信事業が許可制から登録・届出制となり、新規事業者の参入が一気に加速しました。消費者を保護するルール(提供条件の説明義務や苦情処理義務など)も新たに定められましたが、制定後も顧客獲得競争は激化し、消費者保護の領域については課題が多く、現在まで何度も改定を繰り返しています。
現在もなお、IoTの進化(あらゆるモノをインターネットと接続する技術)、AI(人工知能)やビッグデータの活用、5Gの普及、デジタルマーケティングの領域拡大などの新たなテクノロジーの発展が電気通信事業に大きな影響を与え続けています。特にCookie(クッキー)の活用については、利用者のプライバシー保護に関する課題が発生しており、日本だけでなく世界中で保護や規制に対する意識が急速に高まっている領域です。2023年6月に改正される電気通信事業法においても、Cookieの取り扱いに関する法律(外部通信規律)が新たに定められました。