メディアプランニングとは?
特徴と重要性を解説|
プラン作成の7ステップも紹介
2025.12.01
現代は、テレビや新聞といった従来のマスメディアに加え、Webサイト、SNS、動画プラットフォームなど、情報を伝えるメディアが多様化・複雑化しています。「どこに広告を出せばいいか、もう分からない……」現代のマーケティング担当者は、そう頭を抱えているかもしれません。これら膨大なメディアの中から、自社のターゲットに効率よく広告を届けるためには、どのメディアを、いつ、どのように活用するかを計画する「メディアプランニング」が不可欠です。
この記事では、メディアプランニングの概要や特徴、メリットなどを解説します。メディアプラン作成の7ステップや注意点などもご紹介するので、メディアプランニングに取り組みたい担当者様は、ぜひご参考にしてください。
メディアプランニングとは
「メディアプランニング」とは、広告主が効率的に広告を届けるために「どのメディアを、いつ、どのように活用するか」を計画することです。現代はメディアが多様化しているため、計画なしでメディア選定をすること自体が難しくなっているだけでなく、単に広告を出稿するだけでは、伝えたい商品やサービスのメリットがターゲットに届きません。
適切なプランニングは、企業のマーケティング活動全体の成否を左右する非常に重要なプロセスです。実際、「今の施策が本当に合っているのか?」「どこに予算を投じるべきか?」というご相談は、既存のマーケティング活動を見直す企業様からも、当社に数多く寄せられています。
対象となるメディアの特徴
戦略を立てる第一歩として、まずはどのようなメディアが存在するのか、その特徴を理解することをおすすめしています。ここでは、現在主流となっている「PESOモデル(ペソモデル)」という考え方に基づき、広告に活用できるメディアを以下の4つの種類に分けてご紹介します。
● ペイドメディア(Paid Media)
● アーンドメディア(Earned Media)
● シェアードメディア(Shared Media)
● オウンドメディア(Owned Media)
ペイドメディア(Paid Media)
ペイドメディアとは、広告費を払って露出する媒体のことです。テレビCMや新聞広告、雑誌広告といったマスメディアから、リスティング広告やディスプレイ広告、SNS広告といったWeb広告まで幅広く含まれます。短期間で多くの人に情報を届けられるため、新商品の発売やキャンペーンの告知など、広範囲にリーチしたい場合に適しています。
一方で、広告費がかかるため、費用対効果を常に意識する必要があるでしょう。また、ユーザーに広告と認識されやすく、嫌悪感を抱かれるリスクも考慮しなければなりません。
アーンドメディア(Earned Media)
アーンドメディアとは、第三者の評価や口コミによって広がる媒体を指します。SNSでの口コミ投稿や、ユーザーのブログ、専門家のレビュー、ニュースサイトに取り上げられることなどが該当します。企業の意図しない形で情報が広まるため、信頼性が高く、ユーザーにとって参考になりやすいのが特徴です。
しかし、情報のコントロールが難しく、万が一、悪い評価が拡散されてしまうと、ブランドイメージに悪影響を及ぼすリスクもあります。コストをかけずに大きな拡散を狙える一方で、リスクも十分に理解しておくことが大切です。
シェアードメディア(Shared Media)
シェアードメディアとは、ソーシャルメディア(SNS)などでユーザーによって共有・拡散されるメディアのことです。企業のSNSアカウントの投稿に対する「いいね」や「リツイート(リポスト)」、ブログやレビューサイトでの口コミ、UGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)などが含まれます。
企業が直接費用を払うわけではなく、ユーザーの自発的な行動によって情報が広がるため、信頼性が比較的高いのが特徴です。アーンドメディアと類似する概念ですが、ソーシャルメディア上での共有・拡散に特化した概念として区別されています。
オウンドメディア(Owned Media)
オウンドメディアとは、企業が自社で所有・運営する媒体のことです。具体的には、自社サイトやブログ、メールマガジン、公式のSNSアカウントなどが該当します。訴求内容の自由度が高く、ブランドの世界観を深く伝えられる点がメリットです。
また、顧客との関係性を長期的に築き、顧客を育成する役割も担います。ただし、認知度を上げるまでに時間がかかることや、コンテンツ制作などの初期費用がかかる点に考慮する必要があります。
メディアプランニングのメリット
「計画的なメディアプランニング」を行うと、具体的にどのようなメリットがあるでしょうか?こちらでは、一般的に挙げられるメリットを4つご紹介しています。
● 広告効果を最大化できる
● 無駄な広告費を減らせる
● 他社と差別化できる
● データを活用できる
広告効果を最大化できる
メディアプランニングの最大の目的は、限られた予算の中で広告の効果を最大限に引き出すことです。適切なターゲットに、適切なタイミングで、適切なメッセージを届けることで、ビジネス目標(売上増加やブランド認知度向上など)の達成に貢献します。
例えば、ターゲットの行動パターンやメディア接触時間を分析し、それらに合わせて広告を配信することで、より高いエンゲージメントを獲得しやすくなります。結果として、広告から得られる成果を最大化することが可能です。
無駄な広告費を減らせる
広告は、出稿すれば必ず効果が出るわけではありません。ターゲット層が見ていないメディアに広告を出したり、適切ではないタイミングで出稿したりすれば、思うような効果を得られず、予算の無駄遣いとなってしまいます。
しかし、メディアプランニングにより事前にしっかりと計画を立てておくことで、必要な場所にのみ予算を投下でき、無駄なコストを削減できます。非効率的な投資を避けることで、ROI(投資収益率)を向上させることも可能です。
他社と差別化できる
他社と同じメディアに同じような広告を出稿するだけでは、競合に埋もれてしまうリスクがあります。しかし、競合他社がどのようなメディア戦略を取っているかを分析し、自社の強みを活かした独自のメディア戦略を立てることで、市場における差別化を図ることができます。競合にはない独自の視点やアプローチで顧客に訴して、ブランドの独自性を確立するためにも、メディアプランニングは非常に有効です。
データを活用できる
デジタルメディアの普及により、広告の効果を詳細に測定できるようになりました。広告出稿後の効果データを分析して、次のプランニングに活かすといったPDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)を回すことで、継続的な改善が可能です。データに基づいた分析は、論理的根拠に基づいた意思決定につながり、その後のメディアプランニングの精度を高めていけるでしょう。
メディアプラン作成の7ステップ
メディアプランニングを成功させるには、綿密な計画が不可欠です。これからご紹介する7つのステップは、リサーチから効果測定に至るまで多岐にわたりますが、成果を出すためにどれも欠かせない重要な工程です。
当社においても、お客様のメディアプランニングを支援する際は、これらの各工程を可視化させ、チーム内での認識齟齬がないよう注意を払っています。これらのステップをぜひ戦略的に活用してください。
● ステップ1.リサーチと分析
● ステップ2.目的と目標(KPI)の明確化
● ステップ3.ターゲットとペルソナ設定
● ステップ4.予算の策定と配分
● ステップ5.最適なメディアの設計
● ステップ6.クリエイティブの制作
● ステップ7.実施と効果測定
ステップ1.リサーチと分析
まずは競合他社がどのような広告活動をしているか、市場トレンドはどうなっているかなどを調査する「市場の分析」から始めましょう。次に、過去の広告キャンペーンの成果や、自社の強み・弱み、ブランドイメージなどを客観的に評価する「自社分析」をします。また、どのような人が自社の顧客なのか、購買に至るまでのプロセス(カスタマージャーニー)はどうなっているかなどを深く理解する「顧客の分析」も重要です。
昨今は、これらの分析を効率的かつ精密に行うため、さまざまなデータ分析ツールやマーケティングリサーチツールが登場しています。当社でも、精度の高いメディアプランニングを実現するため、最新の分析ツールを積極的に導入し、根拠に基づいた分析を行えるよう努めています。
ステップ2.目的と目標(KPI)の明確化
次に何のために広告を打つのか、目的と目標など具体的な指標を定めます。「新商品の認知度を上げる」「ECサイトの売上を伸ばす」といった目的を言語化し、具体的な数値指標であるKPI(Key Performance Indicator)を設定します。KPIは「ブランド認知度を10%向上させる」「ECサイトの月間アクセス数を5万件に増やす」など、測定可能な数字で設定するのがおすすめです。
ステップ3.ターゲットとペルソナ設定
誰に広告を届けたいのかを具体的に定義するステップです。年齢、性別、居住地、職業、年収などの大まかな層を特定する「ターゲット設定」に加えて、ターゲット層の中から架空の人物像を創り、その人の価値観やライフスタイル、興味・関心、情報収集の方法などを詳細に設定する「ペルソナ設定」まで行うとよいでしょう。ペルソナまで設定すると、より共感性の高いメッセージを考えやすくなり、広告の訴求力を高められます。
ステップ4.予算の策定と配分
キャンペーン全体で使える予算を決め、どのメディアにどれだけ割り当てるかを計画するステップです。まず、広告キャンペーンに投じられる最大の費用である「予算の総額」を確定します。
次に、ターゲットが最も接触する可能性が高いメディアや、目的達成に効果的なメディアに、より多くの予算を割り当てる「メディア間の配分」を設定します。例えば、若い世代がターゲットの場合は、SNS広告や動画広告に対して重点的に予算を配分するなどが考えられるでしょう。
ステップ5.最適なメディアの設計
ターゲットに最も効率よくメッセージを届けられるよう、最適なメディアの組み合わせを考えるステップです。テレビ、新聞、雑誌、ラジオといったマスメディアと、Web広告、SNS広告、メールマガジンなどのデジタルメディアを組み合わせて相乗効果を狙う「メディアミックス」を行います。
また、どの時期に、どのメディアに、どれくらいの頻度で広告を出すかを具体的に計画する「メディアスケジュール」も重要です。新商品の発売時期や季節的なイベントに合わせて調整しましょう。
ステップ6.クリエイティブの制作
メディアの特性を活かした広告コンテンツ(クリエイティブ)を制作するステップです。ターゲットの心に響くような、共感や関心を呼ぶ「メッセージ」を考え、メディアに適した形式で制作します。
また、広告のビジュアル(画像、動画、デザイン)はブランドイメージを伝え、視覚的に訴えかける大切な要素です。このクリエイティブの質が、広告の効果を大きく左右するといえます。
ステップ7.実施と効果測定
計画したメディアプランを実行し、その成果を客観的なデータで評価するステップです。計画に従って広告を出稿し、設定したKPI(クリック数やコンバージョン率、ブランド認知度など)を測定し、目標がどの程度達成されたかを分析します。測定結果から得られた知見をもとに、次のキャンペーンに活かすための改善策を検討しましょう。PDCAサイクルを回すことで、メディアプランの精度を継続的に高めていけます。
メディアプランニングの失敗パターン
メディアプランニングは多くのメリットをもたらす一方で、「よくある失敗パターン」も存在します。メディアプランニングの失敗につながりやすいパターンを挙げましたので、これらに当てはまっていないかチェックしてみることをおすすめします。
● 目的やターゲットが曖昧なまま進行する
● メディア単一に固執する
● コンテンツとクリエイティブのミスマッチ
● 効果測定を怠る
ここでは、それぞれの失敗パターンについて具体的に解説します。これらの失敗パターンを事前に知っておくことで、より精度の高いプランニングを実現しやすくなるでしょう。
目的やターゲットが曖昧なまま進行する
「とりあえずテレビCMを打ってみよう」「SNSでバズらせたい」といった漠然とした目的でプランニングを開始してしまうと、失敗する可能性が高まります。誰に何を伝えたいのかが不明確なため、メッセージが一貫せず、効果も測定できません。結果として、期待した成果を得られず、かけた費用が無駄になってしまうリスクがあります。したがって、プランニングの初期段階で目的とターゲットを明確に定義することが重要です。
メディア単一に固執する
「広告といえばペイドメディア」という考えに固執し、オウンドメディアやソーシャルメディアの活用を怠るのもよくある失敗パターンです。また、複数のメディアを組み合わせることを前提にプランを立てないことも失敗の原因になります。メディアにはそれぞれ向き不向きがあるため、このような失敗を引き起こさないためにも、「ペイドメディアで認知を広げ、オウンドメディアで信頼を獲得し、シェアードメディアでファン化を促すといったような役割分担」を明確に設計しましょう。
コンテンツとクリエイティブのミスマッチ
ターゲットの興味関心と関係のない内容のコンテンツを配信してしまうことや、同じクリエイティブを複数のメディアで使い回してしまうことも失敗につながります。例えば、テレビCM用の動画をそのままSNS広告に流用し、ユーザーのスキップを誘発してしまうケースです。SNSなら短い尺で結論から見せる、Web広告ならクリックを誘発するコピーを盛り込むなど、メディアごとの特性に合わせた工夫が必要になります。
効果測定を怠る
広告を出稿しただけで満足し、その後の効果を測定しないことも失敗パターンの一つです。単にアクセス数や再生回数といった表面的な指標しか見ていないと、なぜうまくいったのか、なぜ失敗したのかを深く考察できません。プランニングが一度きりのイベントとして捉えられ、改善が実行されないのです。効果測定の結果を分析し、得られた知見を次のプランニングに活かしていきましょう。
メディアプランニング成功のコツ
メディアプランニングを成功させるためには、いくつかのコツを押さえておきましょう。ここでは、特に意識しておきたい3つのポイントを紹介します。
● 自社商品やサービスの強みを明確にする
● 計画と結果を可視化する
● A/Bテストをして改善する
これらを実行することで、より高い成果を目指しましょう。
自社商品やサービスの強みを明確にする
メディアプランニングを始める前に、まず自社の商品やサービスが持つ強み(ユニーク・セリング・プロポジション/USP)を明確にします。商品やサービスが、顧客のどのような課題を解決し、どのような利益をもたらすのかを深く掘り下げましょう。
他社の商品やサービスにはない、独自の強みは何かを明確にすることで、ターゲットに伝えたい核となるメッセージを一つに絞り込めます。この核が明確になれば、メディア選びやクリエイティブ制作の方針が定まり、プラン全体の一貫性が生まれるでしょう。
昨今では、Webサイト分析やソーシャルリスニングなど、分析ツールで「自社の強み・弱み」を定量的に可視化させることが可能となりました。当社でも積極的に活用しています。
計画と結果を可視化する
メディアプランニングは、一度計画を立てて終わりではありません。誰が見ても分かるように、メディアの選定理由、予算配分、スケジュールなどをドキュメント化するなどの可視化が大切です。
キャンペーン実施後には、クリック数やコンバージョン率、インプレッション数といった具体的な数値を収集し、当初の目標(KPI)と照らし合わせて結果を分析します。分析結果をもとに成功や失敗事例として評価し、次のプランに活かせるよう改善策を立てましょう。
A/Bテストをして改善する
広告の効果を最大化するためには、クリエイティブ(広告のビジュアルやテキスト)も継続的に改善していく必要があります。そこで役立つのがA/Bテストです。A/Bテストとは、複数のクリエイティブを同時に配信し、どちらのパフォーマンスが良いかを比較・検証する手法です。
例えば「キャッチコピーの効果を検証する」や「ボタンの色を変えて反応を比較する」など、何をテストしたいのかを明確にします。テスト結果の良い方を選び、改善を加えていくことで、より高いパフォーマンスを出していくことが可能です。
まとめ
現代の複雑化したメディア環境において、メディアプランニングは単なる広告媒体の選定を超え、企業の課題を解決するための重要なプロセスとなっています。成果を最大化するには、明確な目的設定、ターゲットの理解、データに基づいた予算配分、そして最適なメディアミックスが必要となりますが、社内にノウハウが不足しているというケースもあるでしょう。
自社で一から計画を立てることが困難な場合、ぜひ、阪急阪神マーケティングソリューションズにご相談ください。メディアプランニングを一気通貫で伴走するサービスを提供しております。まずはお気軽にお問合せください。